DJ FANTA名義で主催するパーティー、『FANTASTIK』が2015年4月に18周年を迎える同氏。DJとしてはもちろん、グラフィックデザイナー、トラックメイカーとして活躍する同氏を取材した。
18才でDJを始めて、自分でパーティーを始めて、フライヤーも最初から自分で作ってました。最初はMacなんて持ってなかったから、海外のカッコイイ写真集とかをコピーして、切って、貼って、文字手書きして、それをまたコピーして、そういうことをひたすら(笑)。他にもフリーペーパーを作ったり、ステッカー配ってたりしてたら、いつの間にか人からグラフィック・デザインを依頼されるようになってた、って感じです。
——当時デザインが出来る人なんてほとんどいなかったと思うんですが、そんな中でどのように自分のスタイルを見つけていきましたか。
絵を描く事も好きでしたが、デザインのルーツは小さいころ作りまくったLEGOかな。LEGOの組み方、デザインのレイアウト、それらに共通してるのは「設計」と「表現」を同時に行うってこと。それを考えることが好き。あとは実践。ひたすら作って、ひたすら見つめ直すっていう、繰り返しでスタイルが形成されると思う。
——どういう時にイメージは湧いてきますかね?
普段からそこらの看板、ポスターやチラシ、オモチャを意識して見ちゃいます。優れたデザインは目に留まると思う。そういうものを発見したり、参考にしたりすることは日常だね。
——日常のものってすべてデザインされたものですもんね。そんな物もすべて肥やしになると。ネタ帳的なのもあったりするんですか?
昔からフライヤーが好き。クラブへ遊びに行ってはフライヤーを持って帰って来てコレクションしてる。デザイン性が高くて素晴らしいから。今はネットで世界中のかっこいいフライヤーを見つけては画像保存したり、5000枚くらいあるかな。
——逆行してることは重々承知でぼくも紙媒体にこだわってる身なんですが、こうして形として残せることでソフト面とハード面、両方含めて初めて一つのパッケージングとして成り立つと思うんですよね。例えばネットとかで中身の情報だけ知れればいいやってことではないと思ってるんです。
そうだね、自分のパーティーのフライヤーやポスターは紙で作る事にこだわってる。宣伝のツールでもあるし、形があって初めて成り立つ自分の主張・表現でもある。やっぱりいいよね、紙って(笑)
——デザイン業のきっかけとなったDJキャリアの始まりはいつ頃だったんですか?
父親が音楽好きで、子どものころから父親の棚から引っぱり出しては音楽を聴いていた。ロックもソウルもヒップホップもあった。好きな曲を集めて自分ベスト盤を作っては繰り返し聴いていた。で、16の時初めてパーティーを体験して、18の時にターンテーブルとミキサーを買った。
——キャリア初期はディスコとクラブのちょうど過渡期だったわけですよね。当時の状況ってどういうものでしたか。
自分がキャリアを始めたころに時代は変わりつつあった。1995年に北見に「CLUB JUNCK」が出来て、今のようなクラブ文化が始まったんだよね。そこから「グール」や「MOVE」、「フェイズ」、「33 RPM」、「スラグ」、「HOOPLA」、「カンダタ」、「M&M」、「UNDERSTAND」と、この街のクラブの歴史は続いてるし、今も進化してる。最初はこの文化がなかなか伝わらなくて、「ウィズフライヤー?なにそれ」「チラシ持ってきて」って(笑)。
——お客さんも育てていかなきゃいけない状態だったんですね。
ディスコが終わってもまだまだいい音楽を求めてたお客さんが沢山いたし、おれらも伝えることに必死だった。フライヤーまいて、フリーペーパー作って、ミックステープ配って、チケット売りまくって。
——そんな黎明期の頃から主宰するパーティー「FANTASTIK」は今年で18周年を迎えますね。
始めた当初はクソガキだから、偉そうなことも沢山考えてたと思う。「この街を変える!」とか。だけど、今はそこまで肩肘張ってやっているわけではない。今も多くの人にもっとこのシーンを伝えねばと思いながらも、その中ですごく楽しくやらせてもらってて、仲間にも感謝しながら18年続けてる。DJをやることで人生が活性化されてる気がするんだよね。
——全然飽きないですか?(笑)
飽きない。もっとDJうまくなりたいっす(笑)。
——DJをやってて良かったと思う瞬間ってどんな時ですか?
やってる人はわかる体験だと思うんだけど、パーティーの要素すべてがハマる時。選曲も照明もフロアのリアクションも最高だー!みたいな。DJひとりじゃそういう瞬間は味わえない。仲間がいて、クラブがあって、お客さんがいて、色んなことが絡み合って初めてみんなで共有し合える、至高の音楽体験。フロアの美しい光景。あれを知るとやっぱりやめられないよね。パーティーを「空間芸術」と呼ぶ人もいる。簡単には作れないけど、トライする楽しさもあるし、あの瞬間を求めて日々すべてのことに取り組んでるよね。
——みんなで作り上げていくものなんですね。自分だけで作り上げれる物じゃなくて。
自己表現だけでは完結しない。クリエイターってそういうことだと思う。DJもデザイナーも相手の反応があってのことっていうか。相手がいて初めて成立するようなことっていうか。何か目的があって、何かを生み出す。相手のリアクションや感動をも、すべて含めてクリエイトする。そういうことなんじゃないかな。