HUMAN

2016.04.11

大川 奈々


2歳から始めたスキーで大学卒業までアルペン競技を続け、基礎スキーに転向。現在は全日本スキー技術選手権大会(通称技術選)に挑戦している同氏。道東でたった二人のSAJナショナルデモンストレーターとして、活躍する彼女のこれまでのスキー人生について語ってもらった。

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実は昔からあまりスキーが好きではないんです(笑)

——スキーを始められたのはいつごろでしたか。

2歳の頃から始めて、高校までは北見市内で続けて、大学からは東京で、卒業までずっとアルペンスキーを続けていました。

——高校は、スポーツ推薦とかではなく普通に進学されたんですね。

スキーも本気でやるなら、やはり強豪の高校に進学する人は多いと思いますが、こう言ってはなんですが、私はあまりスキーが好きではなかったので(笑)高校は地元の北見藤女子高等学校の英語科に進学しました。スキーも今は様々なスタイルがあって、様々な楽しみ方や魅力がありますが、当時の私はそのどれもしっくりこなくて・・・。中学校卒業とかそういった節目節目のタイミングで周りの人には辞めたいと言ってました。高校の間もスキーはずっと続けていましたが、卒業を機に今度こそスキーを辞めようと思っていたんです(笑)卒業後の進路も、自分は青山学院大学に行きたかったんです。ですが入試で落ちてしまって。スキーで推薦をいただいていた日本体育大学に進学するしかありませんでした。

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——そうなんですね(笑)でもそれって逆にすごいことなんじゃないですか?よく今まで続けてこれましたね。

そうなんです。だから大学の時とかは本当にキツかったです。精神的にも肉体的にも。体育会系のいかにもな洗礼も受けまして・・・。一年生の時には、授業・練習以外は掃除ばっかりさせられて。二時間しか寝られないとか理不尽なことも数えきれないほどありました(笑)ただそのおかげで鉄のメンタルを身につけたと思います。元々、スキーをやってる時の心理状況って「楽しい」とかそういうのはなかったので。本当「無の境地」って表せばいいんですかね。ほとんど感情の起伏がないんです。淡々とこなすというカンジで。大学時代のおかげで日常生活にも活かせるようになりました(笑)こんな私がなんで続けてこられたか不思議ですよね。でも本当にありがたいことに今まで周りの方にたくさん助けてもらいながら、ここまで来ることができました。親からもよく「家一軒建つくらいお金かかってるよ」って言われます。「辞めたい辞めたい」と言ってる自分をそうやって家族やコーチ、仲間や友達が助け、支えてくれました。その人たちのためにできる手っ取り早い恩返しは、試合で勝つとかスキーが上手くなることだと思うので、今もスキーを続けられています。私にとってスキーは子供の時からずっと続けてきたことなので、普通の人が歯を磨くとかお風呂に入ることと同じくらい自然なライフワークなんです。それを続けてこれたのは周りで支えていただいたおかげでしかないので、そういった方たちの期待に応えられるように結果を残していきたいと思っています。

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こんな私でも続けてこれたのは周りの人がずっと支えててくれたから

——ここまで来るのには自分だけの力では難しいですもんね。たくさんの人のサポートがあってこそだと思います。本心はどうであれ、結果は残してきているわけですから。応援している人は純粋に嬉しいと思います。

そうだと私も嬉しいです。スキーのおかげで色んな人との繋がりが出来たし、普通なら教えてもらえないような人や、会えないような人に出会えました。その方たちの期待に応えるためにも頑張りたいです。ただ、自分自身、スキーがもっと好きだったら、もっといい結果が残せてたのかなとも思います(笑)

——それでも道東ではたった2人(もう一人はvol.8『ABOUT 1988』で取材させていただいた野家卓也氏)、全国でも最高峰のプレーヤーであることは間違いないんですから。どのくらいすごいかって、僕は今、プロ野球で言えば一軍選手と話してるのと同じですよね(笑)

そう言ってもらえるのはすごく嬉しいですけど、スキーはそこまでの知名度も注目度もないマイナー競技なんですよね。スポンサーも付きにくいですし、メディアの露出も少ない。ただ、今取り組んでいる基礎スキーの大会、全日本スキー技術選手権大会(以下、技術選)はとても人気があるんです。大会自体もすごく盛り上がっているし、競技者以外のお客さんも来ています。そしてスキーは息の長い競技でもあるんですよね。単純に上手いことを競う競技なので、あまり年齢も関係ないんです。私たちの年齢くらいはまだまだ若手と言われています。あとはこの競技が一番プロスキーヤーですね。

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自分の好きなこととスキーが結びついたらとっても素敵なことだと思うんです。

——そうなんですね。貴重な存在であることは変わらないはずなのに、スポーツが違うと待遇が異なるっていうのは悔しいですよね。その待遇次第で競技が続けられたり、より発展したりする可能性があるのに。大川さんは今後どのようなことを目指していくのですか?

私もいつかスキーで生活が出来るようになれればいいなとは思っています。ただ、少し変わったこともやりたいと思っていて。実は私、今でも好きなブランドのショップの店員として働きたいと思ってるくらい洋服が好きなんです(笑)だから私が好きなファッションの部分とスキーをもう少し結び付けられたらと思っています。スキーってどうしても歴史あるメーカーが作っていて、もちろん品質的にはいいものであることは間違いないのですが、ファッション性はイマイチだったりするんです。もしかしたら自分の好きな洋服のメーカーのスポンサードを受けることが出来たら、私を介して既存のスキーのメーカーと新しい物が作れるかもしれない。自分の好きな服とスキーが結びつくってすごく素敵なことだなと。もしそういったことが出来れば今後スキーを始める人たちにも新しい道が示せたりするのかなとも思います。前例を知らないので、どんな形で実現できるかわかりませんが、そうゆうことをやってみたいと思っています。それには今よりも大会でいい結果を出して、有名になって、人気も出てってことが必要になってきます。そのためだったらスキーも頑張れるかなって。それは自分の好きなことなので(笑)「周りの人への感謝」と「自分のために」とこのふたつをモチベーションに今は取り組んでいます。

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——現状の待遇はあまりいいものとは言えないかもしれないけど、新たな境地に取り組まれるのはとても素敵なことだと思います。それだけの実績と影響力はあるでしょうから、その特権を生かして自分の好きなこととうまく結び付けられたらいいですね。大川さんは同い年ということもあり、すごく刺激になります。

そうなったら最高ですね。私も頑張りますので、一緒に頑張りましょう。

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大川 奈々(おおかわ なな)

1989年生まれ、北見市出身。北見藤女子高等学校、日本体育大学卒。SAJナショナルデモンストレーター認定者。 2歳から始めたスキーで大学卒業までアルペン競技を続け、基礎スキーに転向。現在は公務員の傍ら、全日本スキー技術選手権大会(通称技術選)に挑戦している。

MAGAZINE 1988 VOL.8掲載

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