HUMAN

2016.04.11

野家 卓也 × 中西 拓郎


1988年生まれにスポットを当てる、ABOUT 1988。今回は大学卒業までアルペンスキーを続け、現在は仕事の傍ら、道東で二人しかいないSAJデモンストレーターとして活躍する野家卓也。10数年ぶりに再会した幼馴染でもある二人。現在までの競技人生やこれからのアスリート像にまで話は及んだ。

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-都市伝説のような超絶縦社会は存在します(笑)

中西(以下、中) まずは久しぶりというところからなんですが・・・

野家(以下、野)本当にね、何年振りなんだろう(笑)

中 お互い成長して、曲がりなりにもこうやって一緒にお仕事できるくらいになれたのは嬉しいですけど、なんかすごい不思議なカンジだね(笑)さて、そしたらまずは今回、卓也にこの『ABOUT 1988』をお願いしようと思ったのは今回の巻頭がウィンタースポーツの特集ということで、それに伴い、1988年生まれで活躍されてるプレイヤーにお願いしたいと思ったからなんです。どうぞよろしくお願いします。まずはスキーを始めた頃の話から聞かせてもらってもいいかな。

野 スキーを始めたきっかけは父がずっとスキーの指導者をやっていてそこから。小学二年生から始めました。それから遠軽高校を卒業するまで地元遠軽で卒業後は日本大学でスキーをやってました。経歴的には奈々ちゃん(大川奈々さんインタヴュー)と結構似てるんだよね。卒業後は基礎スキーに転向して今に至ります。

外

-頑張っても辞めざるを得ない人もいる中でスキーを続けられていることは幸せ。

中 今回話を聞かせてもらっていてわかったんだけど、遠軽のロックバレースキー場ってすごく盛んなんだね。それには何か理由があるの?

野 そうなんだよね、今遠軽って穴場的に注目されていて。雪質が硬くて傾斜が急だったりするんだよね。だからアルペン競技にも向いてるんだよね。来年は『FAR EAST CUP』っていうオリンピックやワールドカップの次に大きな大会が初めて遠軽で開催されることも決まってる。スノーボードも『Style Shop FREE』さんがあって、ハーフパイプがあって大会もあったり。そういう意味では盛んなのかもしれない。そんなところで育ちました。

中 地元を出てからまさしく体育会系の寮生活でスキー漬けの生活になったわけだけど、それはどうだった?

野 本当にあの時期は地獄だったね(笑)でもそこで自分はほとんどの人間形成がされたと思う。中学校まではなんとなくスキーやってて、周りのライバルは私立のスキー部があるような高校に行ってる中、自分は地元の高校で少し伸び悩んだかなって思ってたんだけど、大学に行って日本選手権に出れたり、もうひと伸び出来たのはスキー漬けの生活があったからだし。寮生活は本当に苦しかったけどね(笑)1年生はスプーン使っちゃいけないとか(笑)

中 都市伝説のような(笑)

野 本当にあるからね(笑)先輩の前でしゃべっちゃいけないとか、先輩を朝起こす時の決まり文句を一字一句間違えちゃいけないとか他にも数えればキリない・・・そんな生活のおかげで今の自分があります。

プロフ

中 卒業してからすぐに基礎スキーに転向したんだよね。

野 アルペンの競技って大学を卒業して9割の人が辞めるんだよね。オリンピックを狙える本当に一握りの人間だけが競技を続ける。やっぱり沢山お金がかかるし、普通の仕事をしながら練習もして上を狙うってのは難しいから。スポンサーがつくかどうかで選手生命が決まる競技なんだ。そこから基礎スキーに転向する人ってのは多いかな。

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-続けた先にはいろんな選択肢があるってことを見せられるように

中 今も基礎スキーの大会は出てるんだよね?

野 基礎スキーの大会は全日本スキー技術選手権大会(以下、技術選)という大会に出ることになるんだけど、簡単に言うと一番スキーが上手い人を決める大会なんだよね。それに挑戦しています。魅せるスキーだからすごく人気があって、アルペンとかよりプロのスキーヤーが多い競技なんだよね。競技人生が長い競技でもあって、俺たちの年齢はまだ若手と言われるくらい。だからこの先もまだチャンスは残ってると思ってます。

中 卓也は公務員として働いてるわけだけど、練習にせよ大会にせよ、休日や有給を利用し臨んでるんだよね。

野 幸いにも土日は休みで理解のある職場だから、今は競技を続けれてます。

中 でもそれってさ、おかしな話じゃない。たまたま卓也がそうゆう条件の職に就くことが出来て、その範疇の中で活動しているから、たまたま競技を続けれているわけで。それがそうではない民間の企業だったり、休みが取れないような繁忙部署にいたり、経済的に困窮してたら、諦めてくださいってことになるの?っていう。ここまで頑張ってきて、これだけの結果を残してきて、そうゆう人材が育ってるってことだけで財産なわけじゃない。それなのに「いや、それって自分が好きでやってるんでしょ?」って言われてるのと同じだよね。そうゆうことをサポートして応援することが裾野を広げたり、人を育てることに繋がるでしょ。そうじゃなきゃ自分の子供や次の世代にスポーツやろうとか勧められないじゃない。俺もずっとバスケやってたから、スポーツって精神的な成長だったり身体的な発育だったり、その他に得るものも大きいからもちろんそれだけじゃないっていうのはわかるんだけどさ。上手くなったってプロになるしか続けれないんだよって夢のないことしか言えないっていう(笑)

野 そうなんだよね。それでも自分は恵まれてる環境にいるからまだ競技を続けさせてもらえてるけど、みんながみんなそうではないから。続けたくても続けれてない人はいるよね。

中 すべて個人の器量次第っていうね・・・身を削りながら続けているっていうのに、待遇は競技の知名度とか影響力で左右される。合宿の里とか言うけどさ、外の人よりもまず地元に頑張ってる人いるよ!ってね。スポーツ推進とかね、あれウソだよ、ウソ!全部ビジネス!(笑)

野 言うね(笑)

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中 卓也が言うと角が立つでしょ(笑)合ってるとか間違ってるってことよりもこうやって意見することで少なくとも考えるきっかけにはなると思うから。

野 でも確かにスポーツ選手って自分自身の人生設計もふまえて考えなきゃいけないよね。ただがむしゃらにスポーツを頑張っていてもダメだっていう。これまでもそれだけではダメだったんだろうけど、これからはより一層そういうことが大事になってくるよね。競技を頑張るだけじゃなく、その先を見据えて自分がどうしていきたいのか考えなきゃいけない。そうじゃないとその競技から離れてしまった時にどうしたらいいのかわからなくなっちゃう。本当はそこまで頑張った実績で色んなことに派生していける可能性があるのにも関わらず、何も考えてない教えられてない状態ではいきなり競技がなくなると路頭に迷ってしまう。こうゆうことを声を大にして言ってくれた武井壮は本当に尊敬してる(笑)あの人はすごいよね。

中 俺、学生の時にさ、コーチからキツい練習とか試合の後に「こういう苦難を越えて、いいお父さんになるんだ」って教えられてたの。バスケットが今の自分の人間形成に大きく影響を与えてるし、好きで楽しくて続けてたからよかったと思ってはいるんだけど、子供心に頑張った先が「いいお父さん」ってそれ聞いた時はすごく力が抜けたんだよね(笑)「いや、別にバスケじゃなくたっていいお父さんになる術って他にたぶん沢山あるじゃん!他になんかないの!」って(笑)そうゆうの関係なく自分は好きでやってたからいいんだけどさ。自分に子供が出来た時にはスポーツを勧めるとは思うし。でも合理的に考える子達がいたら、別にコレじゃなくてもいい、って思われかねないよね。それだけじゃ説得力がない。有望な人材が離れちゃったりするかもしれないし。現状、続けた先に選択肢が少ないから教える側もそうなっちゃうんだけど。やっぱり夢を見させてあげれるともっと状況は変わってくると思うから。

野 続けて行った先には色んな選択肢があるってことを示せるようになりたいと思ってる。今は子供を教える機会もあるし、指導者を教えることも多い。技術だけじゃなくて楽しみ方や魅力が沢山あるスポーツだから、スキーを続けていった先でどうゆう風な大人になっていきたいのかってことを一緒に考えていけたらいいな。これからの時代、スポーツ以外の選択肢ってさらに増えていくと思うし、その中で続けていけたり楽しさをわかってくれる人が増えるといいなって思う。これまでお世話になった人が沢山いるし、地元からこういう結果が出たことに協会もすごく喜んでくれているから、スキー文化をさらに拡げることでそういった人たちに恩返しができたらなと思ってるんだ。IMG_0566

中 現状受け皿がないのなら、自分で切り拓いていく楽しさがあるしね。これから先のビジョンは具体的にどういったことを思い描いてるの?

野 そうだね。さっき言ってたようなことを伝えるためには自分自身がもっと勉強することと、もっといい成績を残すことが重要。今よりも知名度が上がれば責任感も信頼もついて、発言にも説得力がつくと思うから。具体的には技術選でトップ10に入りたいと思ってる。大会も毎年長野県の白馬村で行われてたんだけど、来年から2年間はルスツで行われることが決まってるんだよね。技術選は大会が今とても盛り上がってるから北海道の人がその楽しさに触れ合ってもらえるチャンスが増えて嬉しい。スキーに はきっとみなさんが思ってる以上にたくさんのスタイルと楽しみ方、魅力があるからもっともっと多くの人に楽しんでもらえるスポーツになればいいなと思っています。皆さんぜひ一度観に来てください。

中 これから楽しみだね。こうして再会出来たのも縁だし、これから応援させてもらいます。

野 ありがとう。たまに一杯やりましょう(笑)

中 そうだね(笑)

野家 卓也(のえ たくや)

SAJデモンストレーター

1989年生まれ、遠軽町出身。遠軽高校、日本大学卒。小学校二年生から大学卒業まで競技スキー(アルペン)で活躍。大学1年時より卒業まで、全日本選手権に出場。大学卒業後は基礎スキーに転向。仕事の傍ら、道東で二人しかいないデモンストレーターとして全道各地で活動。全日本スキー技術選手権大会(通称技術選)に挑戦している。

MAGAZINE 1988 VOL.8掲載

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