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2016.04.10

MOVIE REVIEW


第一回 テーマ『クリエイター』

ALI
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ファンタスティックMr.FOX

有りくん
監督:ウェス・アンダーソン
声  :ジョージ・クルーニー メリル・ストリープ 他

 さぁ始まりましたねMOVIE REVIEW。ども、初めましてALIっていいます。以後、お見知り置きを。
初陣となる今回のテーマは『クリエイター』ということで、いま映画クリエイターの中で最も注目を集める映画監督の一人でもある、ウェス・アンダーソンの作品をチョイスしてみました。
ウェス・アンダーソン監督のオフビートでファンタジックなその世界観と語り口は、他の誰とも違う独自の作家性を持っています。例えば…
●色鮮やかな色彩表現
●病的なまでのシンメトリック表現
●作品内に広がる箱庭的ジオラマ感
●衣装デザインへの徹底した拘り
●ディテールにまで拘った小物使い
他にもあげれば切りが無いくらい彼の作品はどれも個性に満ち溢れているんすよ。どの作品のどのシーンを切り取ってもウェス・アンダーソン印。まるで金太郎飴みたいな人なんですねぇ。
はい。ウェスさんの細かい説明はこの辺にして、本題の『ファンタスティックMr.FOX』の話に戻しますね。
《構想10年、撮影期間2年、総カット数125280》このCG全盛の時代にあえて挑んだこだわりのストップモーション人形アニメ。それがこの『ファンタスティックMr. FOX』の凄いとこなんですねぇ。
そもそもストップモーションアニメというものは、人形を少しずつ動かしては撮影する、少しずつ動かしては撮影する…この作業工程を頭おかしくなるくらい繰り返し、そのひとコマひとコマを繋ぎ合わせパラパラ漫画みたいに再生する、っていう超アナログな撮影技法なんですねぇ。ストレスフルで禿げちゃう。
はい。そんなストップモーションアニメだからこそ出せるあえてのぎこちない動きだとかがまた愛らしいというかなんだか懐かしい感じなんすよね。昔みてたNHKの子供向け番組とか思い出すあの感じ。序盤の鳥泥棒をするシーンで、横スクロールしてくカメラワークがファミコンの世界みたいで初っ端からフ〜ッ!最高〜!登場する人形キャラも表情豊かで、ちゃんと血が通ってるようにみえてだんだん気持ちがINしていきます。普段紳士的な振る舞いをしてる動物たちが、食事する時だけやたらと野生剥き出しになる描写とかほんとニヤけちゃう。そして、“家族愛”や”自分らしく生きること”などの普遍的なテーマもしっかりと内包しつつ、序盤から鷲掴みにされたそのワクワクが終始途切れることなく続き、ラストでなんとも幸せな気分にしてくれるとっても微笑ましい作品でした。今年のアカデミー賞監督賞にもノミネートされた彼のクリエイターとしての資質の高さを感じることが出来る一本になっていると思います。

ISSEI
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オール・ザット・ジャズ

オールザットジャズ
監督:ボブ・フォッシー
出演:ロイ・シャイダー ジェシカ・ラング 他

クリエイターって痺れるよね。世の中いろいろな人がいるけど、創造する人って、どこか特別。ネジが一本抜けていると言ってもいい。「いや、そこはちょっと気を遣いましょうよ!」なんて普通に思っちゃうところも、彼らは気にせず我が道を進む。気を遣うこと、それ自体がナンセンス。
 「オール・ザット・ジャズ」はそんなクリエイターの一人を描く。ブロードウェイの演出家である主人公は、幼少時からショー・ビジネス一筋の男だ。毎日、稽古に明け暮れていて、ハードな生活を送っている。
 同時にブロードウェイって、世界から一流が大勢集まってくる場所。ひとつのオーディションでも数百名の応募があり、たったの数人しか選ばれない世界。当然、主人公の座を狙っている人も大勢いる。実力がものを言うシビアな世界。
 既に肉体的にも精神的にも限界な状態でありながら、ストレスを紛らわすための酒、タバコが手放せない。日に日に咳き込む量も増えていく。それでも、朝起きると鎮痛剤を打ってシャワーを浴び、目薬をさして鏡に向かい「ショー・タイム」と自分にはっぱをかける。そして、仕事を始めだす。そんな毎日を送っている。
 ただ、それだけじゃない。人と違うのは彼の生き方それ自体がクリエイティブであること。たとえ、アイディアが思い浮かばなくても、自分の元奥さんや恋人を題材にしちゃう。彼らにとって、最優先事項はそこ。自分の人生をも源泉とし、新しい発想を得て、形にしていく。
 そして、物語の終盤、ついに倒れてしまう。心臓の手術を受けることになった。昏睡状態で意識が朦朧としながらも、頭の中では「自分の死」を題材にした最高のショーの構想を駆け巡らせている。

 自分の人生をもクリエイトの源とし創造を続ける主人公の姿にはもはやあっぱれだ。クリエイターに欠かせないものって、こういうものなんだろうな。生きることがクリエイティブであること、その逆ではない。

 第33回(1980年)カンヌ国際映画祭「パルム・ドール(最高賞)」受賞作品

MOVIE REVIEW

 1988 MOVIE REVIEWでは毎月テーマを決め、映画狂のレビュアー二人により古今東西問わず独自の基準で厳選した1本の映画批評を掲載!

ALI

北見市4条狸小路にあるクラブUNDERSTANDにて10年以上に渡りDJとして活動する傍ら,自他ともに認める映画馬鹿でもある。奇数月第2土曜日に開催されているパーティー、『SOUL TRAVEL』にてレギュラーDJとして活動中。

ISSEI

1988年生まれ。映画コンシェルジュ。北見市出身、東京在住。学生時代に1,100本鑑賞し、卒論テーマは映画学。映画祭の支援、映写技師、映画ライターなどを経験。本職はITソフトウェアの法人営業

※MAGAZINE 1988 vol.2掲載

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